宝塚ひとこと日記

宝塚について、簡潔明瞭に

阿弖流為 2017年 星組

 ことちゃんが阿弖流為なのか、阿弖流為がことちゃんなのか。そんなことを、考えた観劇でした。


  古代東北、蝦夷と朝廷の戦いを描いたこの作品。上級生チームがどん、と重石になり、下級生チームがものすごい情熱を発散して成り立っていたような気がします。生きている舞台って、こういうことを言うのかなあと思ったりしました。

 まずは、上級生チーム!

 紀広純役のきざき先輩が、迫力たっぷりに朗々と歌い、朝廷の権威よ…! と、座席でおののく。そして、きざぎ先輩と対峙する、鮮麻呂しーらんの、静かなる迫力よ…。私、しーらんが出てくる度に泣いていたような気がします。静かに、ただ静かなる朝廷への憎しみと、蝦夷の誇りを胸に、その一瞬にかけるかっこよさよ…‼︎ 賢く、冷静に状況を判断し、感情に流されることなく己の信念を貫き通すその姿。絶対、敵に回したくないなと思いました(そこか)。

 あと、あんるちゃんとはるこちゃんの可愛さね! 夏樹さんの、ほんっと腹立つ貴族っぷりね! 組長の、まってください、いけめんすぎますの桓武天皇ね! 美形って、どうあっても美形なのですね…。私、驚いた。

 あとは、権利を手にした瞬間の人間の豹変ぶりというか、弱さというか。ああ、権力ってひとを変えるよね…という組長桓武天皇の在り方が、阿弖流為をはじめとする蝦夷の真っ直ぐさを強調していた気がします。いやあ、いけめんでした!

 そして、阿弖流為ことちゃん率いる下級生チーム! ことちゃん、阿弖流為だったよ…? 私、ぴーすけくんのことを、もっとスマートな感じなのかな? と思っていたのですが、登場の時から熱量がすごすぎて、めっちゃびっくりしました。ことちゃんも熱い、ぴーすけくんも熱い、カエさんも熱い。

そして、あやなちゃん登場に益々ヒートアップ! 

 蝦夷の誇りの為に! という、ある意味抽象的な理由で戦いはじめるのだけど、ことちゃんが言うと、そうだよね、誇りの為に立ち上がろう‼︎ という説得力がものすごい。あれが、真ん中力というものなのかな。ことちゃんが、心の命、と歌う場面があってすごく印象に残った。蝦夷は、心の命の為に戦うんだな、って。

 その中心にいることちゃんが揺るぎないから、もうその終盤の流れは、もうそうするしかないよね…と。ことちゃん、ひーろー、あなやちゃん、ぴーすけくん、そしていーちゃんが取る言動全てにうそがない。あやなちゃんはことちゃんと共にいくことが当然で、それを表面ではだめだ! と言っても、本当はそうなるのが運命だと知っていることちゃん。そして、その二人を見送ったら、自分も当然のように側に行く覚悟をしていて、それを実行したぴーすけくん。もしかしたら、一番しんどかったのは、田村麻呂せおっちなのかもしれません。権力という幻想にとりつかれた桓武天皇のもと、阿弖流為たちを守れなかった。ぴーすけくんを斬ったとき、彼の心の命は、凍ってしまったのかもしれない。だけど、東北には、阿弖流為たちが守った誇りと炎があった。阿弖流為の子供に胸をたたかれたその時、田村麻呂の心の命はまた動き出したのかなと、そう思いました。せおっち、がんばったね…!

 本当に素晴らしい舞台で、本当に、色々と考えさせられました。今のことちゃんだから出来る阿弖流為だと思う。

 東北には、舞台に出てきた地名が残っています。阿弖流為たちが守ってくれた東北へ、機会がありましたら是非是非おいでくださーい!