宝塚ひとこと日記

宝塚について、簡潔明瞭に

不滅の棘 2018年 宙組

  エロールにとっての不滅の棘とは何だったのだろう?

 今でも、わからないのです。フリーダへの愛だったのか? それとも、不老不死の体になって、早くフリーダのもとへいきたいと願いながらも、それでも生きなければならないと思うそのアンビバレントな感情だったのか。後者なら、悲しい結末を選んでしまったクリスティーナへの、「生き急いだな」という台詞の理由がわかるのです。自分は、父親の薬のせいで、不老不死の体を手に入れた。手に入れたからこそ、フリーダ・プルスと出会い、愛し合うことになった。本来の彼の寿命では、会えなかった女性と。だからこそ、エロールは薬の調合内容が記された赤い封筒を手に入れることを望んだのではないかと。

 生きることに疲れ、もうすぐ砂になることを理解していたなら、わざわざその封筒を手に入れようなんて、思わないような気がするのです。だけど、彼はその封筒を熱望し、自分の子孫のフリーダ・ムハに、その行く末を託した。いわば、その赤い封筒は、エロールとフリーダを結びつける赤い糸で、自分で簡単に灰にしてしまえるものではなかったから。そんなことを、考えました。

 もうね、愛ちゃんが、愛ちゃんで、素敵すぎました。愛ちゃん、すごいわ。二幕終盤、見た目は変わらないのに、言葉を発するたびに、疲れ果て、どんどん年を重ねていくような演技と、最後のお歌に泣きました。エロールの感情が、本当に見ている側の感情に訴えかけてくるようで、愛ちゃん、魂を削ってこのお役を演じているのだな、と。本当にすごかったです。ららちゃんも、本当に良かった! 若いうちにお金がほしいーと、欲望そのままソングの登場は楽しすぎましたが、フリーダ・プルスのような芯の強さが、どんどん出てきて、確かにこのひとはエリイの愛したひとの子孫なのだという説得力がありました。あと単純に、ショートららちゃんがめちくちゃ可愛い。

 可愛いといえば、あーちゃんまいあちゃん兄妹ね! もうほんと、このふたりは純粋すぎて。真っ白な世界の、真っ白なふたり、という感じで、強烈に印象に残りました。ただ同じ純粋でもまいあちゃんは女性としての純粋さ、あーちゃんは子供としての純粋さを演じていたように感じて、そこも興味深かったです。せーこさんに向かって、「ちゃんと読んだらすぐき心臓がとまるはずだ」が、本当に彼はそう思って言っているのだ、ということが伝わってきて、だからこそアルコールに逃げなければ生きていけないハンスの悲しさがと弱さが分かって、余計に、あーちゃーーーん‼︎ と思う。うちのこになって、ええんやで。アルコールはあげませんが、愛情は沢山あげます!  まいあちゃんもね! でも私、せーこさんもだいすきです。あーちゃんのヒースクリフが、益々みたい!と思わされました。

 ということで、2018年観劇始め。素晴らしい作品に出会えたな、と心から思います。お衣装も、音楽も、素晴らしい。あとはほんとに、愛ちゃんすごいな、と。ここまでの世界観に耐えらる人間、愛ちゃん。尊敬します。